『漆原 さくら』のおいしい本屋 漆原 さくら

「地に足がつく」ってどういう意味?①

このブログの筆者、食べ物絵師の漆原さくらは「地に足着いた生き方」を目指し、模索する日々の様子を「チニアシ」というZINEで発信していますが、そもそも「地に足着く」ってどういう意味?という問いに対する今の自分の考えを今回は書いてみたいと思います。

 

この問いに対する答えを説明するためには、私が会社員として働いていた頃のお話をしなければなりません。

 

 

●地に足がついていなかった会社員時代

 

 

 

会社員といっても、私は少し特殊な会社員でした。

 

もともと絵を描くことが好きで美大に入学。在学中に食べ物の絵を描くことの楽しさに目覚め、

なんとなく「これで食べていけるかも」とふんわりと考えて、就職活動もしていませんでした。

 

ただ、在学中から積極的に絵の仕事を依頼してくれそうな「食」にまつわるお仕事をしている年上の方たちに会いにいったことでご縁を頂き、

これから事業を立ち上げようとしている方から「創業メンバーとしていっしょに会社を運営しないか」と誘ってもらうことができたのです。

 

その事業が、地場野菜専門の八百屋を1から作るというものでした。

 

誘ってくださった代表も、その他の創業メンバーも、私より10歳以上年上の社会経験豊富な方たちで、この方たちの近くで働けるというだけでとても刺激的な毎日を過ごせそうでした。

また新卒の私はお給料を頂きながら働かせてもらえるということで、

こんなチャンスはまたとないと思い、飛び込みました。

 

連載「八百屋のまかない飯」25話より

 

そうやって飛び込んだベンチャー八百屋企業ですが、やってみると1から会社を作ることの大変さに驚きの連続でした。

 

約3年間本当にたくさんのことを経験させていただき、楽しいこともたくさんありましたが、

特に後半は毎日車に乗って販売委託先を回り野菜を並べ、原価がいくらとか、粗利がいくらとか、どこでいくらで売れる、とか、数字のことばかりを考えて過ごしました。

 

扱っているものは大地に根を伸ばして育った自然の産物なのに、

毎日車でアスファルトの上をびゅんびゅん走り回り、お金のことばかり考えて目が「¥」マークになっていた私は軸が無く盲目的で、自然から遠く離れていました。

 

 

そしてふと気がつくと、いつも経営判断を人任せにしている自分が居ました。

 

 

創業メンバーとして雇用してもらい、いっしょに会社を作っていくと誓って入社したものの、

新卒の自分と、何年も社会経験を重ねた代表やその他のメンバーの経験値の差は歴然。

 

常に、

教えてもらう、お給料をもらう、指示してもらう、、、その連続で、

自発的に意見したり、行動したりするにしても、いつも代表やその他のメンバーの顔を伺ってしまい、

結局のところ、少し意見の食い違いがあっても自分の中でその思いを包み隠していってしまいました。

 

 

そうしていくと、相手と自分は、常に対等の立場で居ることができなくなっていきます。

 

当時の自分を振り返ると、勝手に自分の中で自分の立ち位置をへりくだっていただけで、代表や他のメンバーは常に対等な立場で居てくれようとしていたのですが、

だんだんと打ち明けられない不満や否定的な想いが心の中で渦を巻くようになっていきました。

 

入社した当初は毎日きらきらと輝いて過ごしていた日々も、

会社への不満を膨らませながら、ルーティーンワークを連続させていく日々に。

 

不満を膨らませながらも、自分が何を主張したいのか、何をやりたいのかもわからないままお給料をもらって、なんとなく会社には所属している。

 

そんな状態はまさに地に足がついていませんでした。

 

 

(次の記事へつづく)

『漆原 さくら』のおいしい本屋|公式サイト

『漆原 さくら』のおいしい本屋 漆原 さくら

食を題材に絵描きとして活動する『漆原 さくら』の公式サイトです。日々の体験を水彩画、日本画、レシピ、コミックエッセイ、文章で表現し、 手製本の小冊子にして毎月パーソナルマガジン【チニアシ】を発行中。食べ物の食感、におい、それを取り巻くストーリーを込めて、思わずお腹が鳴ってしまいそうな、あたたかみある絵をお届けいたします。

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