プロフィール
漆原さくら
食べ物絵師
●経歴
1993~ 長野県辰野町に生まれ育つ
2012. 3 長野県諏訪清陵高等学校卒業
2015.10 個展「おのこしはゆるしま展」(武蔵野美大芸術祭)
2016.4. KADOKAWA コミックエッセイプチ大賞受賞
2017.5 個展 「食べ物絵師の台所」(GALLERY BOBBIN)
2017.8 フランス語学短期留学
2018.3 武蔵野美術大学造形学部日本画学科卒業
2018.4 株式会社Jimono所属。(東京都府中市) 地場野菜専門の八百屋として日々野菜に触れる。
2018.10 食を描く人×器を作る人 漆原さくら× 普賢寺麗 二人展 (Gallery × Cafe 赤坂 Jalona ジャローナ)
2019.5 髙島屋2019年お中元メインビジュアル担当
2019.10 髙島屋2019年お歳暮メインビジュアル担当
2020.11 漆原さくら×大川和宏 二人展 「地球へのピクニック」(Gallery × Cafe 赤坂 Jalona ジャローナ)
2021.4 ウェブマガジン幻冬舎plusにて絵と漫画の連載を始める。
2021.9 食べ物絵師として独立する。(長野県辰野町)
2022.8 個展 「たべる、えがく、いきる展」 長野県伊那文化会館トライアル・ギャラリー
2023.6 漆原さくら×新城文香 二人展 「食卓の上に珈琲の匂いは流れる」(Gallery × Cafe 赤坂 Jalona ジャローナ)
食べ物絵師とは
「食」専門の絵描き という意味合いで、
大学2年次に「食」をテーマに制作していきたいと志してから肩書きとして名乗っています。
小さい頃から絵を描くことを仕事にすることを夢見ていました。
美大に入学して卒業後の進路について考えていた時、
「アーティスト」や「画家」になって、一点ものの作品を個展で販売していくのも何か違うし、
「イラストレーター」になって、ご依頼の主旨に合った絵をスピーディーに描いていくのも何か違う、、、
自分の思い描く生き方や制作活動には、既存の絵を描く職業名が合わない気がしました。
(※個展での原画販売や絵の受注も行っています)
そして、
描いた絵や文をまとめてZINE(自費出版の冊子)を作って発表していくという活動形態が合っていると気づきはじめたとき、
元は浮世絵の原画(下絵)を描くことを職業とする人を表す
「絵師」という肩書きがしっくりとくることに気づきました。
大工や八百屋といった、古くから「生業(なりわい)」として人々の身近にあった職業のように、
「絵師」はいつも人々の生活の近くに居て、
暮らしと美術の間の敷居を下げながら、時にコミカルに、時に感動的に、うつくしさについて伝えていたのではないでしょうか。
自分のなかにある
「人々の暮らしに近い場所で活動、発表をしていきたい」
「さまざまな職業の方と連携しながらいいものを作り上げてみたい」
「遊び心を忘れず、仕事の向こう側で人々の笑顔を思い浮かべていたい」
という信念も、「絵師」という肩書きにはしっくりくると感じました。
なぜ「食」を描くのか
大学1年生の頃、自分の作風について模索しているとき、
ふと描いたスイカを食べる自画像を大学の教授先生に褒めていただいたことをきっかけに、「食べ物を描く」という道に入りました。
大学入学と同時に親元を離れて一人暮らしをするようになり、
食材調達や料理の楽しさにも目覚めていた頃でした。
まだまだ未熟ながら、作ってみた料理の絵やレシピをSNSでアップすることが習慣になり、
周囲の反応を見ながら描いた絵やレシピを編集し、ZINEを作るようになります。
ZINEを大学の学園祭で販売してみると、自分の予想を超えるようなお客様の反応があり、
食べることが好きだという素の自分を表現することの楽しさと、
喜んでくださる方がいることの嬉しさを実感。
「よし、これで食べて行こう。」
そう決めました。
同じように食べ物専門で絵を描かれている方はたくさんいらっしゃいますが、
食べ物絵師、漆原さくらだけの持ち味として、
①ほっこりとした気持ちになれるような温かみのあるタッチ
②モチーフを育て、料理し、目の前に置いて描くなど、とことん対象に迫った描写
③モチーフやお皿の外側から漂う人々の暮らしや人間味、世界観
④絵のほか、イラストや漫画、文章など多彩な表現方法
上記のような点は自信を持っています。
また3年間、八百屋として日々新鮮な野菜と共に過ごした経験があることと、
水彩絵具、日本画材など、水溶性の画材を得意としていることから、
野菜や果物などのみずみずしい食べ物の表現については特に自信を持っています。
ビジョン
私が食べ物絵師として活動する中で達成したいと思い描いているのは、
人は日々、「食べる」ことで足元の大地(自然)と繋がっているということを伝え、
どんどんと離れている人々の世界と自然を少しでも近づけること。
そしてすべての食べ物と、人々の食事の時間や食べ物に対する想いが、できる限り愛で包まれているようにすることです。
大学時代は食べ物の表面的な部分しか見えていませんでした。
ですが地場野菜専門の八百屋を経験したことで、
食べ物の生まれる環境や、生産者さんが抱える問題や農業の現状など、
消費者へ届くまでの間にある何層にも重なった「お金の流れ」で見えていなかったことが見えてきました。
またフードロスやプラスチックパッケージありきの形態など、食べ物を売るビジネスの裏にある うんともすんともいかない問題点も目の当たりにし、自ら手を動かしながら体の芯から腐心しました。
この先どんなにテクノロジーが発展しても、
人が生きるのに不可欠なおいしい食べ物は、健康な土と水、太陽の光、そして生産者さんがいてくださるからこそ生まれるという事実はこれから先何があっても変わらないのではないでしょうか。
年中蛍光灯の下で仕事をしている人がふと季節の移ろいを感じ、ヒト本来の本能的な安堵感に立ち返ることができるのは、旬の野菜や果物を味わったときにふわんっと香る、野生の匂いだったりします。
100年先もみんなで足元の大地に感謝し、「いただきます。」と心から気持ちよくおいしい食事ができるよう、
こどもたちに本当の「食」を伝え、その楽しさを分かち合いたい。
作品を制作したり、お仕事をするとき、
出来上がりの表面にはまったく見えていなくても、奥底の方でそっと心を込めていることです。
こうして消費社会を否定し、じゃあ自分で食べ物を作ればいい!と自給自足を思い描いたけれど、
制作活動に熱中している間に作物を枯らしたりと失敗の連続で、自分の無謀さを実感しています。
人々の世界と自然のどちらにも深く入り込めていない今、その中間でちょうど良い場所を探し、絵を描き、食べていくにはどうしたらいいか。。。
自分自身が「地に足着いた暮らし」を思い描きながら模索していく足跡を「チニアシ」というZINEにまとめて季節ごとに発行しています。
現在進行形で答えは見つかっておらず、これを読んでも明快な答えは載っていない小さな発行物ですが、
手に取ってくださった方おひとりおひとりの暮らしにそっと何かを灯すことができるのであればと思い、
このZINEを定期的に発行していくことを制作活動の中心(ライフワーク)にしています。
「チニアシ」〜 食べ物絵師 漆原さくらのチニアシ着いた暮らしを目指すパーソナルマガジン〜、詳細はこちらから。